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教えてタカアキ先生!〜奥深きミツバチの世界〜第1回「どうして蜂が蜜を作るの?」
はじめに
皆さんは「はちみつ」と聞くとどんなイメージを持たれるでしょうか?
トロっと琥珀色に輝く甘い蜜で、大きな黄色いクマさんの大好物。ミツバチたちが花々から集めてくる自然の恵みで、健康にいいもの。そんな想像をされる方が多いのではないでしょうか?
でも実際には、一般の売り場に行くと、安いものから高価なものまで、いろいろな種類のはちみつがありますよね。この違いってなんでしょう?
はちみつが生まれるまでの世界を覗くと、そこには草木とミツバチと人が織りなす不思議で面白い世界が広がっています。
そこで、この連載では、あなたのはちみつ選びがより楽しく豊かになるよう、会津の豊かな野山を舞台に80年以上に渡り養蜂を続ける、松本養蜂総本場(まつもとようほうそうほんじょう)の代表であり蜂場主、松本高明さんに奥深きはちみつづくりのお話をお聞きしていきたいと思います(記事内では「タカアキ先生」として登場していただきます)。
聞き手は、“沼にハマりがちライター”の「ぬまる」が務めます。毎回、女将の松本彩子さんにもはちみつのオススメレシピをご紹介いただきますので、どうぞ最後までお読みくださいね。
教えてタカアキ先生!〜奥深きミツバチの世界〜
第1回「どうして蜂が蜜を作るの?」

イタリア経由の養蜂家

ぬまる


タカアキ先生、はじめまして。これから毎月1回、養蜂のこと、そしてミツバチのことを教えていただけるということで、どうぞよろしくお願いします!

タカアキ先生


ボンジョルノ ぬまるくん!こちらこそよろしくね。養蜂のことならなんでも聞いてね!

ぬまる


おおっと、それは心強い言葉ですね。タカアキ先生はいつから養蜂をされているんですか?

タカアキ先生

うち(松本養蜂総本場)は、父の兄の代からの養蜂一家なんだけど、私は大学を卒業してから17年間のイタリア生活を経て、会津若松に戻って養蜂をはじめたんだ。そこからちょうど7年になるね。

ぬまる


だから最初の挨拶もイタリア語だったんですね!国外も含めて、いろんな経験をされてから養蜂をはじめられたんですね。

タカアキ先生

そうなんだよ。一度外に出てからこの仕事を始めたので、最初からいろんなことが新鮮だったし、家業のこともある意味客観的に見られたかな。うちはもともと自然や環境を大切にしたこだわりの養蜂をしてきたんだけど、私が入ってからは「もっとこうできるんじゃない?」と、ミツバチたちの健康のためと美味しいはちみつづくりのためにより細部にまでこだわるようになったね。現場でもともとやっていた社員とはよくケンカもしたけどね(笑)

ぬまる


確かに衝突はありそうですね。その辺りの話もとても興味深いので、今後詳しくお伺いできたらいいなと思います。

タカアキ先生

そのうち話しましょう(笑) あとはやはり、世界を見てきたからこそ感じる、これからの社会の中でのこの養蜂という仕事の存在意義、果たさなければいけない役割、つまり「自然と人との共生」のメッセージを伝えていくということを強く意識しながら事業に取り組んでいるね。

ぬまる


そういう意味では、より広い視点も含めて、はちみつづくりの背景を教えていただけそうですね!ワクワクしてきました!

どうしてミツバチははちみつを作るの?

ぬまる


それでは早速なんですが、はちみつについてイチから教えていただきたいです!

タカアキ先生


ベーネ(いいね)!どこから話そうかな。はちみつはミツバチが作るっていうのは知ってるよね?(笑)

ぬまる


はい、さすがにそれは知っています(笑)

タカアキ先生


じゃあ、どうしてミツバチがはちみつを作るのか知ってる?

ぬまる


えっ・・・と・・・食べるため?ですよね?

タカアキ先生


うん、そうだね。だけど、こんなに野山に花が咲いていたら、余るほどそんなに沢山作る必要はないよね?

ぬまる


確かに!あ、ということは、もしかして花が少ない冬のためですか?

タカアキ先生


ビンゴ!そうなんです。ミツバチは冬眠しないからなんだよ。

ぬまる


へぇー!!そうなんですね!!ということは・・・

タカアキ先生

そう、ミツバチ以外のハチは冬眠するんだ。正確には、アシナガバチとかススメバチは、女王蜂だけが次の年に備えて冬眠して、働き蜂は冬になると死んでしまう。
一方でミツバチは、働き蜂たちも女王蜂と一緒に身を寄せ合って巣の中でじっと冬を越すんだ。なので越冬するためには餌が必要なので、はちみつを作るという訳だね。

ぬまる


そうだったんですね!!じゃあ、はちみつは群れのみんなの冬の保存食ということですね。雪国の会津の人が乾物を作ったり、雪の中に野菜を保存したりするのと一緒ですね。

タカアキ先生


そうかもしれないね。みんな当たり前に「はちみつはミツバチが作るんでしょ」って言うけど、実は、そういう理由があるんだ。冬はみんなで集まって丸くなって、その姿はほんと愛おしいよ。

ミツバチの巣ごもり
ぬまる


目が優しいお父さんの目になっていますね(笑) あ、でも、夏の食料はどうしているんですか?

タカアキ先生

もちろん春から秋の期間もはちみつを食べているよ。その余った分が冬の食料になるイメージかな。それから、幼虫が育つための餌にもなるね。女王蜂だけはちょっと違って、より特別な餌を食べるんだけどね。ローヤルゼリーっていう・・・

ぬまる


あ!聞いたことあります!

タカアキ先生

ローヤルゼリーについては、また今度まとめて話そうね。
それで話を戻すと、つまり、はちみつってミツバチたちにとっては数万匹の群れが幼虫から成虫まで一年中健康に生きていけるようにするためのものなんだ。だから、栄養価が高くて腐らない、まさにはちみつはスーパーフードなんだよ

ミツバチはどうやってはちみつを作るの?

ぬまる


早速はちみつの概念が覆されはじめていますが(笑)、そういえば、ミツバチってどうやってはちみつを作るんですか?

タカアキ先生

いい質問だね。はちみつは、花の蜜が原料ということはイメージできるよね。でも、働き蜂が集めている段階では、まだはちみつではないんだ。ただの花蜜(はなみつ)、英語で言うと、Nectar(ネクター)です。

ぬまる


なるほど。

タカアキ先生

まず、外で働くハチたちが花から花へ飛び回りながら蜜を集めるんだけど、その時に、胃の前部のいわゆる「蜜のう」というところに花蜜を貯めて巣に持ち帰るんだ。

ぬまる


たしかに、手で持てないですもんね(笑)

蜜のう
タカアキ先生

うん。そして今度は、巣の中にいるハチたちに口移しで花蜜(ショ糖)を渡すんだ。その過程で、「蜜のう」の中と外を花蜜が出たり入ったりすることで、蜂の体内の酵素が働き、花蜜の主成分であるショ糖が果糖とブドウ糖へと変化するんだ。さらに水分も飛ばされることで糖度も高くなる。

ぬまる


ほぉ、、それってつまりどういうことですか?

タカアキ先生

詳しく説明すると専門的になり過ぎるので簡単に言うと、糖がそれ以上分解されない最小単位の状態に変わるから、体と脳の栄養源としてすぐにエネルギーに変わりやすい物質になるんだ。そして糖度も劇的に増すので美味しくなるし、半永久的に腐らないものになるんだ。

ぬまる


なるほど!それがネクターからハニーへの変化ということですね!

タカアキ先生

そうそう。それで蜜を受け取った蜂たちは、ある程度その変化が起こった後で、巣の中の小部屋、みんながよく見る六角形の穴(ハニカム)の中へ蜜を貯蔵する。そして、羽をはばたかせて風を当て、花蜜の水分をさらに蒸発させるんだ。

ぬまる


おぉ!さらに濃縮させるんですね。

タカアキ先生

そう、水分量で言うと最初の約60%の状態から22%以下にまで減らすんだ。巣の中の温度は常に約35度に保たれているんだけれど、それも、花蜜の濃縮と熟成を促進させて、美味しいはちみつにしていくためなんだ。そうしてひとつのハニカムに完熟したはちみつが貯まると、ミツバチの体内から分泌される蜜ろうでフタがされ、保存用の食料が完成するという訳だね。

ぬまる

人間にはほとんど感じないくらい薄い味しかしない花蜜が、あんなにトロっと濃厚なはちみつに変化するのにはそんな過程があったんですね!原料を加工して最強保存食を作る、ミツバチってすごい職人技を持ってますね!

タカアキ先生

でしょう!毎回、Bravo(ブラーヴォ)!!と叫びたくなるよ(笑) ちなみに、ミツバチ1匹がその一生で作るはちみつの量はどのくらいか知ってる?

ぬまる


どのくらいなんだろう、、コップ1杯くらいですか?

タカアキ先生


いやいや、実はティースプーン1杯くらいなんだ。

ぬまる


えっ!そんなに少ないんですね。。それは貴重だ。。なんだか、それをいただいてしまうのは申し訳ない気もしますね。

タカアキ先生


それが実はそうとも言えないんだよ。でも、話が長くなってきたし、そのあたりの話は次回にしようかな(笑)

ぬまる


そうですね。いやー、初回からはちみつ並に濃厚なお話でした!ありがとうございました!次回も楽しみです!

タカアキ先生


チャオチャオー!

女将のはちみつレシピ

彩子さん


ぬまるさん、たくさん質問していたら、もうすっかり夕方ですね。
寒くなってきたので、温かいお飲み物をご用意しますね。

ぬまる


なんですか〜?楽しみだな〜

彩子さん


今日はとっても簡単で、誰でも出来ちゃう「ハニージンジャー」という飲み物を作りますね。

ハニージンジャー
彩子さん

一かけのショウガをすりおろして、ショウガと同量程度のはちみつを加え、お湯を注ぐだけ。お好みでレモン汁を加えると、ショウガの辛みとレモンの酸味がはちみつでまろやかになって、とっても美味しいんですよ。

ぬまる

これは、疲れた身体に沁みますね〜〜!!辛みも酸味も気にならないし、それぞれの香りがとってもいい。それにお湯を沸かしている間に準備ができるなんて、簡単でいいですね!

彩子さん

簡単で美味しいのはもちろんですが、はちみつとショウガの組み合わせは、喉の粘膜を保湿しながら腸内環境の改善までしてくれるので、季節の変わり目で落ち込みがちな免疫力を上げてくれるそうですよ!

ぬまる


ちょうど、風邪引きそうだったんですよね。これ飲んだら、身体がポカポカ温まってきました。調子良くなりそう!

彩子さん


朝晩冷え込んできましたから、ぜひお家で作ってみてくださいね。

ハニージンジャー

■材料(1人分)
お湯 120ml
生姜 1片
はちみつ 小さじ2
レモン果汁 5ml

■作り方
1.しょうがは皮をむいて、グラスの中にすりおろす
2.お湯、はちみつ、レモン果汁をグラスに入れ、かきまぜる

 

こちらの手順はyoutubeでもご覧いただけます。

おわりに

今回は、第1回目ということで、どうしてミツバチははちみつを作るの?という「Why?」の部分と、どうやってミツバチははちみつを作るの?という「How?」の部分をお聞きしましたが、その2つの視点だけでも、こんなにおもしろい世界が広がっているのかと、ますます興味とさらなる疑問が湧いていきました。これから、どんどん解き明かしていきたいと思いますので、また次回以降もお楽しみに!“沼にハマりがちライター”の「ぬまる」でした!
教えて!タカアキ先生
発行:松本養蜂総本場
語り・監修:松本高明
文章・撮影:貝沼航
レシピ・文章:松本彩子
イラスト:むらやまちかこ
教えてタカアキ先生!連載一覧

第1回「どうして蜂が蜜を作るの?」(現在のページ)
第2回「はちみつを採るのはかわいそう?」
第3回「ミツバチがいなくなると世界は滅ぶって本当?」
第4回「養蜂っていつからあるの?」(現在のページ)
第5回「今、養蜂家が存続の危機って本当ですか?」
第6回「どうして会津で養蜂をしているの?」